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Permanent Residency




避けて通れぬ茨の永住権


イロットとしてアメリカ永住権取得までの道のりは、二度とは通りたくないほどの長く厳しいものでした。どこの国でも外国人に仕事を取られてしまうのは避けたいのです。ですからビザや永住権といったもので制限するわけですが、そこから考えるとその国が移民を必要としているか否かが問題になるのでしょう。現在、先進国のほとんどは逆に移民で困っていて、定職を求めてやって来る入国者を規制しているはずです。どこの国でも大変難しいプロセスで、ほいほい移住を許可しないのは日本でも同じではないでしょうか。

このプロセスは、まずその人間がその国の為になるか、又は必要かを見極めます。大学を卒業して免許取りたての私は、まったく相手にならなかった訳です。そこで短期ビザをつなげて経験を得てきました。最初は卒業後一年間のみ有効の学生ビザのプラクティカルトレーニング(関連業種訓練)、次は一時的専門職ビザ(通常専門分野での学位が必要)でした。こちらも永住権ほどではないにしろ、簡単ではありません。

5年間と 2,500時間が身に付いてはじめてスポンサーになってくれそうな会社の応募規定にたどり着きました。ですから経歴の裏付けの無い者にとって、永住権はとても不可能な存在なのです。経験が無ければグリーンカード(永住権)はくれない。グリーンカードが無ければ経験を積めない。その上、経験が無ければ会社が雇いませんし、会社にとってそういったスポンサーになることに相当なメリットを見い出せなければ、こんな面倒なことに関わったりはしません。普通のアメリカ人ではなく、自分を雇う事で利益を得る会社を探すのも限りなく大変な訳です。このジレンマに挟まれて過ごして来た頃の不安と不満、そしてそれを通り抜ける為の努力は計り知れなく、言葉では表現することができません。

私が知る限り、パイロットの職種を元に永住権を取った人は他には誰も知りません。みなさんこっちで育ってもともと持っていたとか、過去の職業でとれたとか、アメリカ人と結婚したとかです。短期ビザでフライトインストラクターをしている日本人は大勢いますが、その次のステップに上がれる人はめったにいません。しかも永住権を持っていてもメジャーに入れるとはまったく限りません。永住権が取れてはじめて他のパイロットとメジャーを目指して競うスタートラインに着けたというだけです。

アメリカの免許が他国で通用しないと聞くことがありますが、それは「どこのライセンス」ではなくて「誰のライセンス」かが通用するかいなかを左右するのです。どこの国のライセンスでも経験の無い人が持っていれば小型機を飛ばす会社にさえ相手にしてもらえないでしょう。反対に大型機で豊富な経験を同じ ICAOライセンサーとして有すれば、日本を含め世界中の航空会社で働くチャンスはあります。

世界中の4割の航空機が飛ぶこのアメリカのライセンスが低水準と思われているのも変な話ですね。訓練施設の質もピンからキリまでですが、これもまたどこでどうやって訓練を受け、経験を積んで来たかにもよると思います。日本のほとんどの斡旋業者がやってるのは、あくまでも日本人が低価格で短期間に「証明書」をもらうためだけの 「企画」 だと言うことを知っておいて下さい。多くの人たちが旅行気分でお金を払えば免許をもらえるものと信じてやって来ます。

航空雑誌広告の夢物語とは裏腹に、実際には長く、つらく、厳しい出口の見えないトンネルを歩き続けなければなりません。長期間の訓練の厳しさや、訓練中無収入であれば、経済的なこともいつかは問題になります。ハンデにならない英語力を有し、そしてその国での社会生活に精通していなければ、仮に労働ビザが取れたとしても就労などは問題外でしょう。

なんだか、八方ふさがりで最初からやるなと聞こえてきてしまうかもしれません。「誰にでも」というわけにはいかないと言うことと、簡単な抜け道はどこの国に行ってもありえないと覚悟を決めることが大切なのかもしれません。




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